半減期について

プルトニウム検出に伴って、半減期という言葉が取りざたされてるが、中には、微妙な話も多いようなので、簡単に、おさらい。


※わかりにくいところがあったら、ご指摘ください。
※わかってる方は、おかしいこと言ってたら、ご指摘ください。
※というわけで、コメント欄もあるようだったら参照ください。

放射性物質とは

まず、放射性物質について。
物質は原子で出来ている。元素記号とかで出てくる、C(炭素)とかH(水素)とかFe(鉄)とか、そういうもの。


で、原子というのは、基本的に変わらない。鉄は、ほっといても、いつまでたっても、鉄のままである。
だけど中には不安定な原子があって、ほっとくと変化したりする。
こうした物質を、放射性物質と呼ぶ。


なぜ変わるか。


原子は、中性子と陽子がくっついた、原子核と、電子とで出来ている。
原子核中性子と陽子の数にはバランスがあって、おおざっぱに、1:1から、中性子がちょっと多いくらいがバランスが取れている。


たとえば、炭素は、中性子6個、陽子6個で出来ていて、これが一番バランスがいい。


なんだけど、この炭素に、無理やり、中性子をくっつけていくと、中性子8個、陽子6個の炭素も、できたりする。
こういうのは、無理に積んだ積み木みたいなもので、そのうち崩れて、バランスが良い状態に変化してゆく。


中性子8個、陽子6個のバランスの悪い炭素が崩れると、中性子7個、陽子7個の窒素になって、ついでに余った電子一個(ベータ線)を放出する。
こんな風に、バランスが崩れたときに、「余って飛び出す」のが放射線で、放射線を出すようなバランスが悪い物質が、放射性物質という*1 *2

半減期

さて、半減期とは何か?


バランスが悪い物質は、放っておくと、そのうち崩れるが、崩れる速度というものがある。
バランスがすごく悪いものは、どんどん崩れるし、そうでもないのは、なかなか崩れないというわけだ。


半減期とは、「原子の半分が崩れるまでの平均時間」である。
原子が100個あったら、50個崩れ終わるまでの時間である。


半減期が短い原子というのは、だから、「どんどん崩れて、どんどん放射線を出す原子」であり
半減期が長い原子というのは、だから、「なかなか崩れないので、めったに放射線を出さない原子」なのだ。


プルトニウム239の半減期が2万4千年というのは、「それくらい滅多にしか放射線を出さない」とも捉えられるわけだ。

量が大切

放射線の危険性は、以下の3点で決まる。

  1. 出ている放射線の種類
  2. 単位時間あたりに、どれだけ出しているか
  3. どれくらい長く出ているか
  4. 吸引した場合、体の中にどれくらい残るか*3


要するに、放射線の種類と量で決まるわけだ(※ちなみに量がグレイ。種類による人体への影響も計算したのがシーベルト)。


仮に「同じ強さ(シーベルト/時)の放射線が出ている」のであれば、半減期が長い原子は、その量の放射線がずっと出続けるので、長いほどヤバい。
逆に「同じ原子数の放射性物質がある」のであれば、半減期が長い原子は、放射線を少ししか出さないので、長いほど安全である。


つまりプルトニウム半減期が長い、というだけでは、危険かどうかはわからないというわけだ。


もちろん、プルトニウムが安全な物質というわけはなく、それらが検出されたことには問題があるが、重要なのは、総合的な放射線の量である。*4

ローンの支払い

要は、「半減期が2万4千年だよ。こわいね!」というのは、
「2万4千年ローンだよ、こわいね!」と言うようなもんだ。


そういう時は、まず「月々いくらなの?」と聞き返そう。


借金の合計が同じなら、ローンが長いほど月々は安くなる。
月々1円なら、2万4千年ローンでも、あんまりこわくないだろう。
逆に、3ヶ月ローンであっても、月々10万だったら、そっちのほうがイヤだろう。


そういうところを押さえないで議論している人がいたら、眉につばをつけておこう。

*1:物によっては、1回崩れるだけでは、完全に安定した原子にならず、さらに何度も崩れて放射線を出すようなものもある。

*2:自然にバランスが崩れた場合以外でも、人為的に、すごい力をかけて無理やり原子をくっつけたり、壊したりする時にも、放射線は出る。

*3:体の中に入っても、すぐトイレから出ちゃうようなものなら影響は少ない。一方で、骨とかにすぐ吸収されて、長く体内に残るようなものは、その分の影響が出るというわけだ。また呼吸で肺に吸い込むか、食事で食べるかでも差が出る。だいたい解ると思うが、肺に入るほうが、外に出にくくて害が大きいようだ。もちろん量が前提なのは言うまでもない。

*4:もちろん単位時間あたりの強さも、それなりに効いてくる。たとえば月々1万円の10年ローン(合計120万円)なら普通に払えるけど、一括払い100万円はムリだよ! みたいな場合もあるというわけだ。