怪人連盟

リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン (Vol.1) (JIVE AMERICAN COMICSシリーズ)

リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン (Vol.1) (JIVE AMERICAN COMICSシリーズ)

 かの「ウォッチメン」のアラン・ムーアによる史上最強のバカクロスオーバーコミック。
 映画にもなったのでご存じの方もいるかもしれない(ま、映画と原作は全然違うので気にしないでOKです)。

 19世紀イギリス。政府によって集められた5人の「超常的なる紳士」。
 すなわち、ミナ・ハーカー(離婚してウィルヘルミナ・マリー)、アラン・クォーターメイン、透明人間、ジキル博士(とハイド氏)、ネモ船長である(淑女もいるって? そこはほら、19世紀だから)。
 彼らの前に現れる悪魔的な計画とは!?

 ヴィクトリア朝といえば……のあの人がいないが、その理由はゆっくりと明かされるので本文をお読みあれ。

 まぁなんというか、明らかに頭の悪い(誉め言葉)設定に、全勢力を注ぎ込むアラン・ムーアと、雰囲気のありまくる絵で執拗にディティールを描くケビン・オニールの組み合わせは天下一品。
 上述の5人以外にも、メインの悪役から、コマの端っこまで、無数の19世紀フィクションのキャラが登場しまくる。大概は、すさまじい悪意というか諧謔を含む(例えばポリアンナも登場しますがその運命は……)。

 1巻も大概ひどいが、2巻に至っては、哄笑するしかないほどに気が狂っている。
 2巻のメインストーリーは「宇宙戦争」(この作品は、発表年代に基づいて整理しています。原作が書かれたのは1898年)。
 1巻は、様々なヴィクトリア朝キャラをクロスオーバーしたのだが、これ自体は様々な先例がないわけじゃない*1
 2巻は、様々な火星をクロスオーバー。
 いや冒頭に四本腕の緑色人が出てきた時は、もうどうしようかと。
 どういうことかというとお馴染みの蛸型宇宙人はもとより、バロウズの「火星シリーズ」もムアコックの「火星の戦士」もC.S.ルイスの「マラカンドラ」も、「火星だしー」ということで、まとめて登場しているのだ!
 いや全部の作品の火星人が一緒にいるという。バカにもほどがある(誉め言葉)。

 有名人には有名な作品なので、なんで今さらと言われるかもしれないが、主に原書で読んでたので、巻末の連載小説部分は読み飛ばしていたのだ。日本語版の訳+素晴らしい注釈で読み直して、おおいに驚倒した次第。

 コミック部分も大概無茶なネタ詰め込みをやってると思ったが、連載小説部分は、さらに悪ノリ。平均して1pに10個以上ツッコミどころがある上、そんなネタわからねーよ!のオンパレード*2

 ヴィクトリア朝萌えと、バカクロスオーバー萌えの人にはお薦め(狭いな、おい)。

 なお、3巻も(原書が)今年の10月末に発売する予定。先代怪人連盟(「ガリバー旅行記」のガリバーに、「テンペスト」のプロスペロに……)の足跡を追って行く話だとか。まぁ遅れがちなシリーズだけど、無事発売されるといいなぁ。

*1:シャーロックホームズの宇宙戦争とか。もっともここまで高密度に多作品のネタをぶちこんだのは空前絶後じゃないかと思う

*2:比較的わかりやすい例:ジョン・カーターランドルフ・カーターの先祖だった。